店長の部屋に日章旗、緊急連絡先が警察以外のあるコンビニでの騒動

あなたとコンビにホットステーションでいい気分

僕が一瞬、働いたコンビニには、大きな日章旗が飾られていて、店長が色付きメガネで、緊急連絡先が警察じゃない話。

 

 

そこは大手コンビニチェーン。

金が無い大学生時代、バイトをしようと、家から一番近い、コンビニの面接を受けた。

 

 

そこには作業着を着たフワッとしたパーマをあてた男の人がいた。電気工事でもしているのかな、と思ったら、「店長の◯◯です」と礼儀正しい。(もちろんこれは初めだけだった)

 

 

そしてその後ろに、チリチリパーマをあてて、虎が大口を開けている顔が正面にデカデカとあるニットをきたおばちゃんが店長の少し斜め後ろに座っていた。

店長「いくつ?」

僕「20歳です」

店長「若いね、学生?」

僕「はい、◯◯大学です」

店長「ああそこの大学の子なら、うちにもいるよ。すぐ辞めるんだけどね。大丈夫?」

僕「バイトは続くほうです」

これが初めてのバイトだったw

店長「ああそう。いつから入れる?」

僕「明日からでも」

店長「今日は?」

僕「今日?今日でも大丈夫です」

「今日から、今から働け」と言われた時に色々と気づくべきだった。

 

 

その時、後ろのおばちゃんが、「今日は人がいないから」、とか、「今日はこの後」とか店長に何か言った。

「ごめん、明日からでいいや。採用!」と、「採用!」のところだけ大きな声で、少し笑っていった。

僕「ありがとうございます」

 

 

その後も後ろのおばちゃんは店長に小声でこそこそ言いながら、僕の方をチラチラと見ていた。このおばちゃんは店長の母親で、未婚の45歳(くらい)の男とその母親(以降、チリチリと呼ぶ)で経営しているコンビニだった。

 

 

 

 

大声

そのコンビニでは挨拶に厳しかった。

「いらっしゃいませ」

「ありがとうございます」

当たり前のことだが、当たり前ではなかったのだ。

 

 

その声量が、体育会系バリに、言わされる。

コンビニの外にまで、駐車場の車の中にまで声が響くほどに、声を出さされる。(まじで店長が目指していたのがそこ。「駐車場のお客様にも声が聞こえるように!」)

 

 

アルバイトを始めて、1週間は声のことばかり。いくら大声出しても、声が小さい、と呼ばれるのだ。

もう劇団四季の練習場の様相となるコンビニ。

客に笑われたり、朝だと「うるさい」と小声で言われたり。

 

 

うん、これすぐに辞める人続出はわかるわー、ってなったね。

 

 

「いらーしゃーいませー」「あーりがとーございーいまーす」

大声だけでいいのになぜか言葉を冗長に言ってしまう。

 

 

みんなそうなる。そんなものなのかと思うくらい、僕もそうなっていた。

そして店長とチリチリは蚊が鳴くような声で「いらっしゃいませ」「ありがとうございます」をいうのだ。

 

 

 

緊急連絡先

そしてどう考えてもおかしかったこと。

 

「もしも強盗とか万引きとかがあったら、警察に電話する前に、ここに電話して」と店長。

 

それはバックヤード、冷蔵ジュースをいれる部屋に大きく書かれていた一つの携帯電話。

龍野さん090-◯◯◯◯-4649

『よろしく、、、』と心の中に思ったけれど、警察より先に?と不思議に思った。

しかも強盗が来たときにも。。。

 

 

その龍野さん、偶然にも一度コンビニに来て「店長いる?」と声をかけられた。

スキンヘッドでスーツを着て身なりはきちんとしている人だった。怖いという感じではなかった。

 

「今いません」と基本コンビニにはいない店長のことをそういうと「ちっ」と大声で言い、携帯電話で電話をしていた。

「俺だけど。今、店来てんだけど。どこ?」

ドスの効いた声で龍野さんはそう話した。僕にかけた声とは180度変わっている。

 

そして電話の5分後。

店長はスエット上下で現れた。メガネに色がついていなくて、ふわふわパーマがストレートに。超急いでいる様子が漫画のように伝わる格好。

「すみません!」と自分が店長であることを忘れたようにまずは龍野さんにそう言った。

 

 

龍野さんは顎で店長をコンビニの外に出し、駐車場でくだくだと何か言っていた。店長はただ地面を見て壊れた人形のように頭を下げていた。

 

その後の店長の機嫌が悪いことと言ったら無い。何を聞いても「知らん。自分で考えろ」と言い、いつもは小さい声の挨拶も人一倍大きかった。挨拶に怒りをぶつけていてちょっと良かった。

 

龍野さんがヤ◯ザだったのか何だったのかは分からない。でもお世話にならない方がいい感じの人ではあった。

 

 

 

お金が合わない

ある日、年配の女性とレジに入った。その女性はチリチリの友人のよう。いつも笑わないチリチリがその年配の女性と笑いながら話していたのだ。

 

 

その年配の女性は異常に髪がサラサラしているのが第一印象で、ストレートのロングだが、サラサラして、プラスチックのようなおかしな艶だったが、ズラだった。

ストレートのロングなのに、少しずれている時があったのだ。

 

 

その年配の女性(以降、ズラと呼ぶ)レジをまったく覚える気がない。

夜6時〜7時の混み合う時間、その時に2台あるレジに僕とズラが入っていた。

 

 

ズラは毎回、レジ打ちに僕を読んだ。

 

 

あの時は「少々お待ちください」を何度言ったことか。

 

商品をスキャンする⇒お金をもらう⇒金額を押す⇒決定ボタン⇒お釣りを渡す。

 

単純に言えばこれだけ。コンビニのレジなんて昔からレジ界の最先端に使いやすいものだった。でもズラは金額を押さないのだ。

 

 

すぐに気づいたのだが、レジがわからないのではない。お金が数えられていないのだ。

 

500円だけもらった時は、なんとか『500』を押した。

できたのはそれくらい。

 

「ねえねえ、ちょっと」

母親ばりのノリで、お客さんを待たせて、レジの操作を聞いてくる。

単純な操作ばかりだからすぐに解決するけれど、毎回呼ぶ。

毎回毎回。そのくせにチケットとかボタン操作でなんとかなる処理は難なくこなす。

 

 

つまり数字が読めないようだった。

数字盲だったのだ。

レジ立ったらあかんやろ、って素直に思った。

 

 

 

給料天引き

そしてその夜のレジ精算。

 

コンビニでは決まった時間や、バイトが交代する時間になるとレジに今どれだけお金があるのかを売り上げとお釣りに照らし合わせて清算をする。

もちろんお金が合わないといけない。そしてズラはもちろんお金が合わなかったのだ。

 

2000円。

 

ズラがいた3時間の間に、2000円もお金が足りなくなっていた。

「給料から1000円ずつ引いとくからね」

店長は笑顔でそう言った。

 

「は?」僕はとっさにその言葉が出た。

 

 

店長はその言葉に眉間にシワを寄せた。

「は、じゃないし。君もレジしてたよね、こっちの?お金が合わなかったら、きちんと出すなんて常識だよ、世の中の」

僕がその辺で怒り心頭に発していたのは言うまでもない。

数字が読めないズラのフォローでレジを2台回していて、実質お金を触っていない方のレジで出たお金の誤差を僕が埋めないといけないなんて理不尽さに。

しかもこう言った業務上のお金の誤差を従業員に払わせるのはいけないことくらい知っていた。

僕はあれこれと言い返した。店長は常識、常識とばかり言っていた。

 

 

ズラはもうすでに帰っていた。しかも給料天引きに了解して。

「半分だったら出します」とまで言い置いていたそうな。

 

 

僕はレジの前で店長と言い争った。お店に入ってくるお客さんがその様子を不思議そうに見ていた。

「ちょっと中に入れ」と店長がいつも居座っている裏部屋へよんだ。

 

 

 

日章旗と天照大神

その店長の部屋には大きな日章旗があった。

その下には天照大神と習字で書かれた掛け軸がデカデカと吊るしてあった。

一畳くらいの狭い部屋に。

 

 

あとはテーブルとパソコン。

なんだこれは。

右○気取りか?

 

 

店長はそこでくだくだとお金のことを言い出し、そこからさらに勤務態度がどうだの、声が小さいだの違う話になっていった。

 

この日本の恥のような店長の話はよく覚えていないけれど、僕はそこで制服を脱いで、パソコンの画面のところへ思いきり投げて、「さようなら」と言って出て行った。

 

 

店長は逆ギレするかと思いきや、意外と驚き、黙って僕を送り出した。

 

 

 

給料は現金

そこから気まずかったのは給料は初回現金でもらわないといけなかったこと。

 

 

1週間だけで、大体20時間働いた。時給750円でも違法ではなかった頃、15000円をもらいに行った。

 

 

真昼のコンビニは人が少なく、そこにはチリチリしかいなかった。

僕がお店に入ると、「あっ」と声をあげた。

僕「給料ください」

僕は自分がもらうべきものをもらいにきただけだ。

チリチリ「店長いないわよ」

チリチリはチリチリ頭でそう言った。

僕「店長には別に用はないです。給料をもらいにきました」

チリチリ「でも給料は店長から渡すことになっていて」

僕「じゃあ家まで持ってきてもらえますか?」

チリチリ「それはできない」

僕「じゃあ振り込みは?」

チリチリ「それもできない」

 

僕「できないわけないだろう!振り込みくらい。振り込み手数料くらい払ってやるからそうしろ!」

僕は大声をあげてしまった。馬鹿息子の親だと思うとついつい声をあげてしまった。

 

これまでいつも店長の後ろに隠れてこそこそチラチラと見てくるその態度にもイライラしていたから。

 

「ちょっと待って」

 

そう言って店長の部屋に入って行き、電話をしていた。そして封筒を持って出てきた。

 

「はい、これ。ここにハンコだけ押して」

「ハンコはない」

そう言って僕は問答無用にレジにあった赤ペンで、親指の指紋を塗り潰し、拇印を押した。

「じゃ!」

そう言って僕はコンビニを出た。チリチリはただ黙ってその様子を見ていた。

 

 

親指についた赤ペンを入り口の自動ドアのガラスに擦りつけてやった。

ガラスにはうまく付かず、大して親指から赤色がとれることはなかった。

 

 

 

計算ミス

コンビニを出てすぐにお金を確認した。

 

 

まさか1000円の天引きだけじゃなく、何か他に天引きされていたら、また言いにいかなくてはいけない。

 

 

茶封筒からお金と計算書を出した。

 

 

29000円。

 

 

多いじゃないか!

 

 

そんなに働いたっけ。僕は自分の労働時間を過小に考えていただけだという勘違いが働いた。

でも1週間、月曜日3時間、火曜日4時間、水曜日5時間、木曜日5時間、土曜日3時間だったはず。土曜日に怒って帰ったけど、3時間は働いていた。

 

 

計算書を見てみた。

すべての時間が倍になっていた。

エクセルで作った表なのか、何かの手違いで時間が倍になっている。水曜日と木曜日なんて10時間も働いている。

 

しかし1000円はきっちり天引きされている。

そこが悔しかったけれど、僕は40時間働いたようだ。残業代がついていないと思ったけど、言いに行くのはやめたw

 

普通のサラリーマン並みに働いていた。いや普通のサラリーマンは週80時間働くか。

まだまだひよっこだぜ。

まあ慰謝料も含まれているのだろう。

それにしても計算ミスに、計算ミスで対抗してくるとは。

僕はそこのコンビニの看板のライトが眩しく輝いているのを後にして、原付で走り去った。

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