お釣りのないラーメン屋

あるラーメン屋

ある町でふらっと入ったラーメン屋でヤバすぎて無銭飲食しかけた話。

 

 

そこは寂れた商店街にある小さなラーメン屋。

お昼時なのにお客さんはいなかった。この時に色々と気づくべきだった。

 

 

カウンターに座りメニューを見た。ラーメンや餃子、チャーハンなど普通のラーメン屋のメニュー。普通のラーメンにしようかと思ったけれど、

 

  • チャーシューメン950円
  • チャーシューメン大1150円
  • チャーシューメンチャーシュー大盛り1950円
  • チャーシューメン麺大盛り1000円
  • チャーシューメンスープ多め2050円
  • チャーシューメンメンマ多め1850円

 

チャーシューメンだけで6種類のパターン。

そしてその値段配分が気になり過ぎた。

 

 

 

チャーシューメン大

チャーシューメン大は普通に200円増し。

大サイズといえばどこにでもある。

まあチャーシューも麺もスープ(大だからといってスープの量を気にしたことはないけど)も少し多いのだろう。

ここまでは良かった、、、(いやまだ一個めやん)

 

 

 

チャーシューメンチャーシュー大盛り

しかしチャーシュー大盛りの1000円増し。

チャーシューどんだけ多いねん。

 

普通の倍くらい?いやもっとか。

もうチャーシューの中に麺が居心地悪そうにまぎれてるくらいの量か?

 

肉喰いてー、って時にはいいだろう。

 

いやいや実際、チャーシューにめちゃくちゃいい肉使ってるんかも。

松坂牛とか、神戸牛とか。

 

チャーシューって牛なのか知らんけど。いや豚やろう。豚野郎。

 

てかチャーシューってどこの部位?部位とかじゃなくて人工か?

人工って何か違うか。

色々な憶測が飛び交う。

 

 

 

チャーシューメン麺大盛り

しかし麺大盛りが50円増し。あんまり多くないのかな。麺が自家製で原価安いから麺大盛りはたいして価格上げんでええだけかな。

でももうちょい価格差つけても良くね?

麺大盛り頼む人多いやろし。

 

やっぱり大した大盛りじゃないのかな。

 

でもチャーシューメン大よりは多いのかな?

 

 

聞いてみようと思ったが店員がいない。あの屈強なタンクトップのチョビヤギ髭の店員。

どこに行った?

 

まあいい。

 

 

 

チャーシューメンスープ多め

はい出た、スープ多め1100円増し。

どんだけ多いねん。

 

スープに間違って麺が入って、麺が溺れてるーみたいなレベルの量か?

 

いや待てよ、スープにバリこだわりかな。

 

高級鳥の鶏ガラスープ。トキの鶏ガラか?

いやトキは天然記念物やから獲ったらあかんやろ。でもそこをリスク犯して獲って鶏ガラにしてるんかも。

そもそもトキが美味しいのか、ってとこだけど、なんせ珍しい鶏ガラを使ってるから少し多めにするにも値段が張るのだろう。

 

 

チャーシューメンメンマ多め

そしてそしてメンマ多め900円増し。

どんだけメンマ。あの謎の野菜?か何かもわからんやつ。例えての表現が難しいあいつ。

 

これはあんまり興味ないな。

 

歯に引っかかるし。

迷う。

 

 

 

メニューの下の方

肉喰いたいもあるけど、安い麺大盛りでもいい。

スープ多めは頼めない。

 

所持金2000円。

 

結局普通のを頼んだ。

 

これだ、と決めたとき、ずっといなかった店員がちらちらカウンター越しにこちらを見ていた。

すみません、と手をあげる前に、もう近くに来ていたのだ。

 

瞬きを一回した瞬間に目の前に現れた。

「チャーシューメン普通でいい?」

それにすっかり心を読んでるし。

 

「はい、お願いします」ただそう答えた。

 

そんな店員に心を奪われている間に、大事なものを見落としていた。

メニューの下の方に注意書き。

 

※注意書き

  1. 注文後のメニューの変更は致しかねます。
  2. お釣りはございません。差額が出る場合は、寄付金とさせていただきます。
  3. 食べ残しは、処分料として1,000円いただいております。

 

なんだこれは!

 

 

2千円

財布には2千円ある。

確か、千円札と500円玉と100円玉5枚。

 

そしてチャーシューメンは950円。

どちらにしろ寄付か。

50円くらいいいか。

 

いややっぱ嫌だ。

 

お腹も空いてるし、追加で何か頼もう。

 

チャーシュー丼ってのがあるなあ。

  • チャーシュー丼150円
  • チャーシュー丼大盛り200円
  • チャーシュー丼チャーシュー多め550円
  • チャーシュー丼ご飯多め750円

 

 

 

チャーシュー丼

またか。また俺を試すのか。もう疲れたよ。

チャーシュー丼の普通安くていいけど、大盛りにするとまた50円の端数が出る。

 

チャーシュー多めはまた特別に多いのだろうか?

お腹は空いている。

でもご飯多めはご飯多すぎやしないか?

一升くらいあるんじゃ無いか?

そんなに食えない。

 

店員さんはラーメンを作りながら、こちらを見ていた。

俺がメニューを見ているのに気づいたのだろう。

 

そしてメニューを見ながら、これだと思い、手を上げる前に、

「追加で注文?」

「うおっ」

 

店員さんはもう真横にいた。俺は不覚にも「うおっ」なんて言ってしまった。

 

「チャー、、」

「チャーシュー丼チャーシュー多め?」

「うおっ!」

 

そして俺が注文しようと言葉を発する前に、もう心で読んでいてくれたのだ。

「はい、お願いします」

もうそう言うしか無かったことは言うまでもない。

 

 

2千円札

あとは注文を待つだけ。

そこで少し気になったので、財布を確認した。

 

千円札が、、、、

二千円札!!

 

あれ、確かに千円札を、じゃあ小銭がないのでは、、、無い!!

しまった。。。

 

注文ミスだ、寄付するお釣りが増えた。

500円。

絶対嫌だ。

また追加注文だ!

 

 

コーラ1,000円

飲み物でいい、飲み物を、、、

 

コーラ1,000円

いやーぼったくりやん。

いやこれだけでぼったくりというのは言い過ぎか。名誉毀損か。

 

コーラのペットボトルかもしれない。

ドラッグストアでは安い時は200円もしないかもしれなが、お店で提供するならこれくらいの利をつけるだろう。

でもペットボトルなんて大学生の家飲みのお供じゃあるまいし、一人で飲み干すの無理だし、そもそもお金足りない。

まさかのドリンクはコーラだけ。

 

ヤバイ。

 

普通のものを頼もう。

仕方なし。

 

 

餃子大

餃子だな、もう。

 

どれどれ。

  • 餃子6個100円
  • 餃子大1個500円

 

もうなんなんだよ。極端かよ。

 

餃子6個100円は安い。

でも餃子大1個500円は高い。

 

単純計算で餃子30個分やん。

でも寄付なんて嫌だし、寄付なんて嫌だ。

 

勇気を出して、注文しよう。

もう手をあげる必要もない気がしてきた。

心の中で叫んでみる。

『餃子大追加で』

 

店員さんの方を見る。

親指を立てて、こちらを見ている。

「餃子大、ありがとうございます」

 

そう言って、ウインクまでしてきた。

 

俺は優しく微笑み返したよ。

 

 

チャーシューメン、チャーシュー丼、餃子

そしてメニューが揃った。

チャーシューメン普通は普通だった。

チャーシューメンの鏡のような普通のチャーシューメン。

そしてチャーシュー丼チャーシュー多めはヤバイ。

量で言うとこれくらい。

枚数で55枚。

なんて奮発してるんだ!

これで550円は安い。

1枚10円。コピーと同じ。

 

最後の餃子大。

もうこんな感じ。手足が生えてほんと歩き出しそうな感じ。

手を広げて、親指の先から小指まで2つ分。

餃子というより枕だ。

本当に枕そっくりだった。

 

注文としては、餃子の付け足しに、チャーシューメンとチャーシュー丼を食べてるようなものだ。

でも腹を括った。

 

時間制限があるわけではない。

『食べ切ってやる!』

心のなかでそう叫んだ。あっ、、、

 

店員さんが笑顔でこちらを見てまた親指を立てた。

ゆっくりと噛めば意外と食べれるのだ。

口の中でおかゆにすればいい。

 

 

 

1時間後、、、

餃子がようやく半分になり、チャーシューも30枚くらい食べた。

 

食べることに飽きた。

 

飽食だ。

いや、意味が違うだろ。

 

 

気もそぞろになり、またなんとなくメニューを見て、吐きそうになった。

「商品はすべて税抜き価格です。」

メニューの角の方に小さな小さな文字でそう書かれていた。

 

心を無にした。

 

悟られてはいけない。

 

まさかお金が足りないなんて。

 

俺はこれをすべて食べて走る準備をした。

 

ただただ早く早く無心に走るための準備を。

(※無銭飲食は犯罪です。)

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