寝たきりの高齢者の定期預金の解約について
まずは女性の友人の話です。
寝たきりの高齢者の定期預金の解約の話。人によっては切実な問題ですね。
彼女には寝たきりで介護老人保健施設に入っている父がいます。
施設の費用も馬鹿にならないようで、毎月20万円の費用で、彼女の父の年金は毎月15万円。差引5万円のマイナス。
これまで彼女の父がいくらか普通預金の通帳に貯金があったのでそこからマイナス分を補っていたようですが、それも底をつきた。
さてどうするものかと考えていた矢先、彼女の父は同じ銀行で定期預金に入っていた。
金額は1,000万円。
銀行で、事情を説明したところ、「本人の意思確認が必要」とのこと。本人が窓口には行けないならば、銀行員が本人のもとへ伺い、意思確認をする、という。
もちろん彼女の父は動くことはできないので、銀行の窓口で「お願いします」と彼女は言ったものの、頭の中では非常に困っていた。
彼女の父は自分自身の名前はもちろん彼女の名前さえわからず、もう5年ほどまともな会話もしていない。
うー、あー、とすでに言葉も失ったうめきを時々あげているだけだ。視線も虚ろで目を見ても、視線が合っているのかどうかさえ分からない。
銀行では定期預金を解約する方法が意思確認しかないのだから、そんな父の状況は気にしていられなかった。
そして約束の日、施設に銀行員が来てくれて、彼女の父と面会をした。彼女の父は相変わらずの様子だ。目を開けて天井を見ているようだが、見ているというよりもただ目を開けている。そして口も半開きにしている。
彼女の父の隣に座って話しかける。
父は何も答えない。
父は何も答えない。
父は何も答えない。
偶然、彼女の父が口を開いた。
それと同時に銀行員はそれを聞いて頷いた。
彼女は呆気に取られたが、お金の心配もなくなり素直に書類に記入をすすめた。
それを聞いた私は「意思ってなんだ?!」と思いました。
それで【まだ科学で解けない13の謎】(著者:マイケル・ブルックス、訳:楡井浩一 草思社 2010年)を読んでみました。
【まだ科学で解けない13の謎】
さて、この本では科学でまだ解明されていない身近なことから、宇宙のことまである程度容易に説明されています。
その主題は以下のものです。
- 暗黒物質・暗黒エネルギー
- パイオニア変則事象
- 物理定数の不定
- 常温核融合
- 生命とは何か?
- 火星の生命探査実験
- “ワオ!“信号
- 巨大ウイルス
- 死
- セックス
- 自由意志
- プラシーボ効果
- ホメオパシー(同種療法)
この中の11.自由意志に書かれていることについて少しご紹介します。
自由意志
自由意志は1788年、哲学者カントにより、神や魂の不滅と同等の地位に置かれたが、近年の科学によりそれには疑義が挟まれた。
それは脳に電極を差し込むなどの実験で、脳の特定部位に電流を流すと体の一部が動くというもの。(1990年台前半、イェール大学医学部脳神経外科医イツァク・フリードによる実験)
これは身体の動きに関する意志だが、それとは違って『人の認識や行動や意図』や、『日常の当たり前に行う行為』の意志に関しても、実験により、
『人の認識や行動や意図』については影響を受けやすく(1999年のダニエル・ウェグナーとタリア・ホイートリーの”一般家庭用こっくりさん”を改造した実験)、
また『日常の当たり前に行う行為』についても制御のきかないもの(どうしても布団から出たくない朝、気がつけば布団から出ていることは意識(意志)の支配なしで行うことである。心理学者で哲学者のウィリアム・ジェイムズ『心理学原理』など)だと分かっている。
そして最後にハーヴァード大学の心理学者スティーヴン・ピンカー「自由意志は虚構ではあるが、現実世界で使い道がある」という言葉がある。
簡単にまとめると、自由意志については、科学的には存在が考えられにくく、弱いものだが、自由意志というものは文化や法規範において有用なもので、利用ができるものということだろう。
まとめ
このような内容で書かれている本です。科学はまだまだ人間の行動を全て解き明かしていない。(この本は2010年のものなので、それ以降に若干の進展があるかもしれませんが。)
果たしてそれは解き明かす必要があるのかないのか。科学的に解き明かすことが本当に必要なのか?と言うことも問いかけられます。
宇宙に関することはこれからますます解明されていかれると思うので、そこは知りたいところですがその全貌を明らかにするのも大変な時間がかかることと思います。
人間も宇宙と同じくらい難解なものかもしれません。
難しそうなことも割とわかりやすく書かれている本です!気になる人は是非ご一読を!