児童虐待で痛ましい事件が起き、亡くなる子どもたちがたくさんいます。時々ニュースになるような事件は氷山の一角でしかありません。
児童相談所への児童虐待相談対応件数は 2016 年度には 12 万件を超えてお り、5年前と比べて倍増している。また、児童虐待により年間約 80 人もの子 どもの命が失われている。
(児童虐待防止対策に関する関係閣僚会議、児童虐待防止対策の強化に向けた緊急総合対策、平成30年7月20日)より引用
子どもを持つ親からするとこのような事件が他人事とは思えません。耳を疑うような虐待によって我が子の命を奪うなどという行為は信じられないものです。それは子どもがいるといないとに関わらずそう思うものでしょう。
そしてそれはニュースの向こう側だけの話ではありません。あなたの住む家の近所から時々聞こえて来る子どもの泣き声、ちょっと泣き方がおかしいな?と思ったら、虐待の可能性があります。
そしてその時あなたはそれを無視することはできません。通報をする義務が生じます。
目次
1.児童虐待の4分類
まずは児童虐待ってどういうもの?という人のために、厚生労働省が定義している児童虐待の4分類が以下になります。
身体的虐待
殴る、蹴る、叩く、投げ落とす、激しく揺さぶる、やけどを負わせる、溺れさせる など
性的虐待
子どもへの性的行為、性的行為を見せる、ポルノグラフィの被写体にする など
ネグレクト
家に閉じ込める、食事を与えない、ひどく不潔にする、自動車の中に放置する、重い病気になっても病院に連れて行かない など
心理的虐待
言葉による脅し、無視、きょうだい間での差別的扱い、子供の目の前で家族に対して暴力をふるう(DV)など
このように見るからにわかる身体的な暴力や性的な行為に加えて、日常的な世話をしなかったり、罵声を浴びせたりする心理的なものもあります。つまりは、自立していない子どもが健やかに生活するうえでそれを侵害するものが虐待であると考えられます。
その時は冒頭に記載した「189」に電話をしてください。お近くの児童相談所につながります。
2.法律による通報(通告)の義務
児童虐待を目撃した時、あなたはそれを通報(通告)しなければいけません。それは以下の法律に定められています。
【児童虐待の防止等に関する法】
(児童虐待に係る通告)
第六条 児童虐待を受けたと思われる児童を発見した者は、速やかに、これを市町村、都道府県の設置する福祉事務所若しくは児童相談所又は児童委員を介して市町村、都道府県の設置する福祉事務所若しくは児童相談所に通告しなければならない。
2 前項の規定による通告は、児童福祉法 (昭和二十二年法律第百六十四号)第二十五条第一項の規定による通告とみなして、同法の規定を適用する。
3 刑法(明治四十年法律第四十五号)の秘密漏示罪の規定その他の守秘義務に関する法律の規定は、第一項の規定による通告をする義務の遵守を妨げるものと解釈してはならない。
【児童福祉法】
第二十五条 要保護児童を発見した者は、これを市町村、都道府県の設置する福祉事務所若しくは児童相談所又は児童委員を介して市町村、都道府県の設置する福祉事務所若しくは児童相談所に通告しなければならない。ただし、罪を犯した満十四歳以上の児童については、この限りでない。この場合においては、これを家庭裁判所に通告しなければならない。
2 刑法の秘密漏示罪の規定その他の守秘義務に関する法律の規定は、前項の規定による通告をすることを妨げるものと解釈してはならない。
3.通報後の児童相談所の48時間以内の対応
それでは189番通報をした後、児童相談所はどのような対応をしてもらえるのでしょうか?
安全確認
子供の住所が特定されている場合は、子どもの氏名・年齢・家族構成を確認・調査をして、子どもの通う保育所や学校の確認を行います。そして実際に子どもがどのような状態か目で確認をしに行きます。
家庭訪問
次に実際に子どもがどのような状態か目で確認をしに行きます。保育所や学校にいない場合(通っていいない場合)は、家庭訪問を行います。住所が特定できない場合には、その付近の状況を調査して、該当の子どもがいるか等調査し、特定をして安全確認に行きます。
児童相談所は生命の危険の回避や安全確認のために、上記のことをすべての通報に対して48時間以内に行ってくれます。
4.児童相談所への連絡は全てが虐待ではない?
では子どもの泣き声が聞こえたら、すぐに「189」に電話をするべきか?と言われると、状況判断が必要になります。
例えば、近所に住む付き合いのある家庭の子ども。うちの子どもとも何度も遊んでいるけれど、確かにわんぱくで手がかかりそう。親も「しつけに困っている」と言っているその家庭から、その子の泣き声が聞こえてきたら即電話?
この例では状況を判断してもすぐに電話にはならないと思います。子どもが遊んでいる時に怪我をしただけかもしれませんし、危ないことをしていて注意をされただけかもしれません。それは児童虐待ではありません。子育てには「しつけ」があり、その「しつけ」が児童虐待との境界で一番難しいところです。
子育ての悩みの相談も
児童相談所は虐待だけではなく、子育ての悩みについても相談できるところです。子育てで過重なストレスがかかっていると思ったら、子どもと自分のためにも児童相談所へ連絡をしてみても良いかもしれません。
そしてご近所などで見たり聞いたりする児童虐待かもと思うものは、このような場合です。
子どもの泣き方
・1度ではなく頻繁に、いつまでも大人が怒鳴り続け、子どもが泣き叫び続けている場合
・1度ではなく頻繁に、大人の声は無いが、子どもが異常に泣き叫び続けている場合
(子どもが泣く理由はたくさんあります。まだ言葉が出ない赤ちゃんや子どもにとって、泣くというのは大事な表現の一つです。お腹が空いたり、気に入らなかったり、夜泣きに至ってはその理由が全くわからない場合も多いです。大人にとって、子どもが泣くという行為は育児の悩みの一つでもありますが、自然な泣き方とそうで無い泣き方というのはすぐにわかるものです。)
子どもの状態
・いつも子どもの顔、体に怪我や痣がある、異常にやせ細っていたり、どう見ても汚かったりする場合
・(真夏や真冬に限らず)ベランダや車に放置されている場合
私は、子どもが副流煙を吸う範囲でタバコを吸うことさえ虐待だと思っています。ましてや子どもが乗っている車の中でタバコを吸うなんて信じられません。
5.まとめ
- これは児童虐待だ、と疑うことがあれば、早めに「189」番まで電話を
- 子育ての悩みも児童相談所は相談に乗ってくれます。何かある前に早めに相談を