おすすめのTEDのご紹介です。
「レラ・ボロディツキー:言語はいかに我々の考えを形作るのか」
言語によって考え方は違うのか?
世界には7,000ほどの言語があり、異なる音・語彙・構造を持っています。
多種多様な言語があるが、それぞれの言語によって考え方に影響があるのか?
古くからずっと考えられてきたこの疑問。
言語が考え方を形成しているのか?という疑問に対するこれまでの研究の答えとなるような科学的データのご紹介です。
オーストラリアのアボリジニの場合
ヨーク岬半島の西端の ポーンプラーウに住むクウク・サアヨッレ族は「左」や「右」という言い方はせず、東西南北の方角で言い表す事をする。
例:右足に蟻がいる⇒南西の足に蟻がいる、コップを左にずらして⇒コップを北北東にずらして
挨拶も「どちらの方へ行くの?」と声をかけるそうです。
またそれは時間の概念についても、大きく違っています。
これはレラの祖父の古い写真5枚。これを年代順に並べる場合です。
英語話者は左から右へ。ヘブライ語やアラビア語話者は反対で右から左へ並べるだろう。
しかしクウク・サアヨッレ族はどうするか?彼らは「左」「右」という言い方はしません。
それは、北へ向いているクウク・サアヨッレ族の人は右から左へ。南に向いているクウク・サアヨッレ族の人は左から右へという風に、つまり時間軸を「東から西」と考えており、それに対応した並べ方をする。それは大地に対応した時間軸を持っています。
数を数えるということ
ここにいるペンギン。今これを見ている人は3秒で答えられる人が多いと思います。
数を数えて把握するという行為は言語的技術です。
しかし、これを数える語を持たない人もいます。数字に該当する語を持たない人もいて、そのような人は正確な量の把握が苦手です。それは単なる言語技術の問題です。
色の分け方
この4つの色を見て何色だと思うでしょうか?
英語ではこれを全てblueと呼ぶことができるが、ロシア語ではblueのような単一の語がなく、左側の薄い青を「goluboy」、右側の濃い青を「siniy」と区別するのです。
色の濃さを素早く見分けられることができます。
男性名詞と女性名詞
多くの言語にある男性名詞、女性名詞。日本語ではあまりピンとこない考えですが、ドイツ語やスペイン語にもそれはあります。
太陽はドイツ語では女性名詞、スペイン語では男性名詞。
月はドイツ語では男性名詞、スペイン語では女性名詞。
写真にはないが、橋はドイツ語では女性名詞、スペイン語では男性名詞となっており、その形容がドイツ語では「美しい橋」とか「優雅な橋」と女性的な言葉となり、スペイン語では「力強い橋」や「長い橋」と男性的な言葉となる傾向にあるようです。
出来事の言い表し方
言語によっては出来事の言い表し方にも違いがあります。例えば写真のような場合。
英語では「彼は壺を壊した」と言いますが、スペイン語では「壺が壊れた」と言う方が普通で事故であれば誰がやったとは言わないのです。
つまりこのような事故の場合でも、英語話者は「誰がやったか」を覚えているが、スペイン語話者は誰がやったかではなく「それは事故だった」ということを覚えている、という違いが出てきます。
それは話者によって、事件や事故の目撃証言にも大きな違いが出てくるという論理的思考にも言語は影響を与えているということなのです。
まとめ
言語はこのように時間の概念や数の概念あるいは性別、論理にまで影響を与えています。どの言語を使うかによって物事を違って見ているといえます。
世界に7000程ある言語も現在週に1つずつ消えており、今後100年間で言語は半分になると言われています。また現在でも様々に行われている人間の心や脳に関する研究の多くが英語話者のアメリカ人学生を被験者に行われているということは、言語の特性を考えると偏った考え方であり、それが広まっているという現状です。
言語によって物事の見方や考え方が違う。
この研究の成果は、相手の考えが自分と異なる時に相手を非難するのではなく、相手の言語的背景も含めその考え方を尊重する、あるいは結果として同じ考えであるということを発見する手助けかもしれません。
それはもちろん同じ話者内でも同じく、相手の考え方はどのような背景に出ているのかを考えることは大事なことです。
そして相手の考え方や意見を常に尊重するという考え方は忘れてはいけませんね。
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