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新井紀子:ロボットは大学入試に合格できるか?
目次
仕事を奪われる人間と東京大学合格を目指すAI
AIは単純作業の仕事を奪うが、それに代わり新しい仕事も出てくると予測されます。
しかしAIによって仕事を失った人のうちどれだけの人が、その新しい仕事に就けるのだろうか。
もしもAIは人間よりも物事をうまく学べるとしたらその問題もどうなるのだろうか?
「東ロボくん」という東大合格を目指すAIロボットを作成し、研究をした新井氏は、人間と比較したAIの能力を研究する必要があると考え、人間だけが教育を通してのみ獲得できるとされているスキルや専門的能力について調べるため日本の最高峰である東京大学に合格するためのAIの研究を行った。
東大への道のり
東大へ合格するためには全国共通のセンター試験と東大の用意する2次試験に合格しなければいけません。
始めのセンター試験では7科目の試験を受けて85%以上の高得点を取る必要があります。
センター試験で合格しないと記述式の2次試験を受けることさえできません。
AIが試験を解く道筋:選択式の場合
それではここでAIはどのように問題を解いているのかをご説明します。
アメリカで放送されているクイズ番組「ジェパディ!」を例にします。
このクイズ番組ではこのように一言で答えられる雑学が問われます。
人はこの問題の答えがわからないとき、ネットで検索しますね。
検索サイトで 「モーツァルト 最後 交響曲」というように入力します。
AIも基本的に同じことをします。
そしてたとえばwikipediaのページにヒットすると、AIはその内容を読むのかというと違います。
現在のAIは読解ができません。
その代わりに検索と最適化を行い、キーワード「モーツァルト」「最後」「交響曲」が 沢山出てくること 認識し、惑星の名前であってキーワードと一緒に現れるものを答えに違いないと判断します。
そうやって「ジュピター(木星)」という答えを見つけます。
ロボットは読むことをせず、理解もしないが、統計的に正しい答えを導きます。
AIが試験を解く道筋:記述式の場合
そして記述式の2次試験では600語の小論文のテストです。
そしてAIはウィキペディアなどから文を取り出し組み合わせ最適化して何ひとつ理解もしないで小論文を作ります。
そしてAIはたいていの学生よりも良い小論文を作成しました。
AIが試験を解く道筋:数学の場合
数学は長い間計算をする事だけにとどまっていましたが、以下の問題のような高校までの数学を最初から最後まで解けるシステムが開発されました。
Q:4点O(0,0,0)A(0,2,3)B(1,0,3)C(1,2,0)について以下の問いに答えよ。
1.4点O、A、B、Cを含む球面の中心Dの座標を求めよ。
2.点Dから4つの点A、B、Cを含む平面に垂線を引き、交点をFとする。線分DFの長さを求めよ。
3.四面体ABCDの体積を求めよ。
AIは自然言語で記述された問題を取り込めるように2千の数学公式、8千の日本語の単語を教えました。
そして元の問題を機械にわかる式に変換、記号処理、そして人には読めない完璧な解答を出します。その証明は数学者でもわからないものになっています。
「東ロボくん」は記述式の2次試験の数学で上位1%に入ることができました。
東大入学?東ロボくんのミス
しかし東ロボくんは東大へ入学できませんでした。
AIはまったく意味を理解していないのです。
例えばこんな英文の2人の会話の穴埋め問題
Q:Nate: We’re almost at the bookstore. Just a few more minutes.
Sunil:Wait. ______ .
Nate:Thank you! That always happens.
Sunil:Din’t you tie your shoe just five minutes ago.
Nate:Yes,I did.But I’ll tie it more carefully this time.
1.”We walked for a long time.”
2.”We’re almost there.”
3.”Your shoes look expensive.“
4.”Your shoelace is untied.”
簡単な英文の穴埋めで、答えは明らかに4番ですが、東ロボくんは2番を選びました。
ディープラーニングの技術を使って150億個の英文を学んだ後にもかかわらず。
AIは読めないし、理解できない。まるでそうできるかのように見せかけているだけなのです。
東ロボくんは上位20%以内にいて東大を除く、日本の6割以上の大学に合格できる成績です。
このように東ロボくんはホワイトカラーになる大部分の人々より上にいるけれど、この知性を欠いた機械が人間の学生をなぜ凌駕できたのでしょう?
よく考えると、ここには懸念事項がありました。
読解と理解ができていない
例えばここに問題があります。
仏教は主に東南アジア、東アジアに、キリスト教はヨーロッパ、南北アメリカ、オセアニアへ、イスラム教は北アフリカ、西アジア、中央アジア、そして東南アジアへ広がりました。
文章を読んで以下に当てはまる言葉を選んでください。
Q:( )はオセアニアへ広まった。
1.ヒンズー教
2.キリスト教
3.イスラム教
4.仏教
中学、高校の教科書から文を数百個取り出して、簡単な選択式問題を作り、数千人の中高生に答えいました。
答えは問題文に書いてあります。
きちんと読めば誰でも分かるものです。
東ロボくんは正解しましたが、中学生の3分の1は間違ったのです。
3年ごとに各国の15歳の生徒 数学、科学、国語の能力を測る「OECD生徒の学習到達度調査」で日本はいつも上位に付けていることから、このような問題は日本だけの問題ではなさそうです。
能力を伸ばせるような優れた教材がウェブで無料公開され、インターネットを見れば誰でも良く学べるはずだと信じられてきたが、その恩恵を受けられるのは きちんと読める子だけで、きちんと読める子の割合は思っているよりずっと少ないのかもしれません。
暗記から理解へ
人間がAIよりもうまくできること、それは理解をするということを、子ども達ができるように、教育の変革を急がねばならないようです。
理解するということはAIにはすごく欠けています。
多くの生徒は知識の詰め込みになっています。それはむしろAIのほうが得意なことです。
人への教育は丸暗記から意味の理解へという転換が必要に迫られています。
まとめ
人間の仕事を奪うAIは人間を超えたすばらしい存在のように思われていますが、暗記はできるが理解ができていないということを知り、懐疑的になりますね。
そして人間は理解ができる。理解をして、問題を解決する。
知識を利用して、事態を把握して物事を考える。
人間にはできて、AIにはできないこともありそうです。
暗記だけの教育ではAIに追いつこうとしているだけになります。
暗記に関してはAIを超える人間はなかなか存在しないと思います。
すぐにでも理解をする教育をして、AIにはできない人間の教育の必要が迫られています。
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