太田垣章子【家賃滞納という貧困】 2019年 ポプラ新書
一戸建てor賃貸住宅
住居となると「一戸建て」か「賃貸住宅」のどちらかが多いが、賃貸住宅はおよそ50%となっている。(平成30年住宅・土地統計調査より)
特に、結婚した時に、どちらに住むか選択をするだろう。
どちらが良いかは、働き方や考え方によるが、一戸建てを建てずに賃貸住宅を選ぶ人も少なくない。
賃貸住宅は一戸建ての総額に比べると安く見えるが、果たしてそうだろうか?
もちろん長く住み続けたら総額は安くないし、所詮は借り物を借りているだけだ。
長期ローンを組むよりはマシだと思うが、賃貸住宅にもリスクはある。
そんな賃貸住宅で起こった家賃滞納をめぐる物語が【家賃滞納という貧困】には書かれている。
家を借りるというリスク
賃貸住宅に住むことは人生の中でも1度くらいはあると思う。
一番多いのが進学の時。
他県の大学や学校に通うようになった時、そして就職しても実家に戻らない場合は、賃貸住宅に住むことだろう。
そんな賃貸住宅に住むと初期費用は何が必要で、それぞれいくらくらいなのか?
まずは不動産会社に支払うもの。
不動産会社費用
- 敷金(家賃1ヶ月分)
- 礼金(家賃1ヶ月分)
- 前払い家賃(家賃2ヶ月分)
- 仲介手数料(家賃1ヶ月分)
- 火災保険料(2万円)
- 保証料(連帯保証人がいない場合)(家賃1ヶ月分)
上記は1例として安く見積もっていますが、それでも初回に家賃6ヶ月分!家賃が5万円だとしたら初回だけで30万円は不動産会社に支払う必要があります。
敷金は一部が退去時に戻ってくるだろうし、前払い家賃は次月の家賃が含まれているとしても、初回だけで数十万円が必要なのです。
さらにその他費用が必要です。
その他費用
- 引っ越し費用(10万円)
- 家具家電(冷蔵庫・テレビ・炊飯器・洗濯機・掃除機など20万円)
- wifi工事費
- ご近所への挨拶回り
これも1例として安く見積もっていますが、その他費用にも30万円は必要になりそうです。
家賃を滞納すると?
初めからバカにならない費用がかかる賃貸住宅。
さらに毎月家賃に共益費、そして水道光熱費にその他固定費がかかる生活。
そんな中、家賃を滞納すると、法的にどうなるか?【家賃滞納という貧困】を参考にまとめてみました!(家賃滞納という貧困,20p)
家賃滞納
⇓
電話等による支払督促・連帯保証人への連絡
⇓
内容証明郵便による「条件付き解除予告通知書」送付
(3ヶ月分の家賃を滞納した場合)
⇓
明け渡し訴訟の申し立て
⇓
強制執行の申し立て
⇓
催告
(裁判所の執行官が来て、1ヶ月以内の期日までの明け渡しの催促の公示書が部屋に貼られる。)
⇓
強制執行
(裁判所の執行官が来て、荷物を出されて、鍵を取り替えられる。)
⇓
強制退去
(過去の滞納家賃は支払わなければいけません!)
【家賃滞納という貧困】の事例
事例では中流以上の生活者や1級建築士という家賃滞納とは程遠い人も家賃滞納者として登場します。
あとはシングルマザーや就職難で家賃滞納をする人、高齢で行方不明になった人、親の体調不良により中学生からアルバイトをして家賃を返済する話など。
その中の1事例として印象に残っているのは、部屋の中で餓死していた男性。その遺体の引き取りに、「遠方だから交通費がかかる」という理由で渋る父親というなんとも悲惨な話まで。詳しくは本書を実際に読んでもらいたい。
家賃を滞納する、ということで浮き彫りになってくる貧困が、現実に増えているようだ。
家賃保証会社という謎
【家賃滞納という貧困】にも出てきて、上記の必要費用のところにも記載しましたが、連帯保証人に代わる家賃保証会社というものがあります。
これは連帯保証人になってくれる人がいない人がその代わりとして、家賃保証会社に費用を払うと、賃貸ができるというもの。
連帯保証人は、多くは両親や兄弟などの親族、それかよっぽど中の良い友人がいればその人になってもらうと思いますが、人間関係が希薄化している現在、両親との不仲や親族、友人との交流がない人は多く、連帯保証人がいないときに、この家賃保証会社というものが利用できるという仕組み。
その多くは不動産屋ではこの家賃保証会社との連携、もしくは不動産屋の別会社としての家賃保証会社というものがあるようですが、まだ法規制もなく、実態が謎のよう。(家賃滞納という貧困,114p)
そして連帯保証人になってくれる人がいれば、「家賃が高すぎない?」とか、「この物件、本当に大丈夫?」とか、ある種の審査を兼ねて、身の丈以上のところに住むのを諦めたり、もっときちんとした物件を探したりすることもありますが、家賃保証会社がそんなことをいうわけない。
というか、不動産屋が設立した家賃保証会社なんて、費用をなんとか取ろうとする仕組みでしかない気が。。。(もちろん連帯保証人がどうしてもいない人には助かっていると思うが)
希薄化する人間関係
家賃滞納の実態を読んでいると、そこには人間関係の希薄化が原因の一つとしてみて取れる。
不仲の親類と連絡を取らなくなり頼れなくなった、とか、離婚をして元夫と疎遠になり養育費の支払いがなくなったとか。
反対に、家賃滞納をしても、そこから人間関係を修復したり、思い切って疎遠になった人に頼っている人は、問題を乗り越えて、次に進めている人が多いという印象。
家を借りるという大きなコストに人間関係という二つの問題が密接に絡んでいると思われる。
シェアハウスならこの二つの問題を乗り越えられるんじゃないか?と思いました。
シェアハウスという選択
家賃滞納という問題が増加している中で、シェアハウスという選択はよくないですか?
シェアハウスは今、香川県にも少しあり、都会ではたくさんありますね。
シェアハウスはまずコストが安い!
初期費用も明確で安く、家具家電付きで、家賃も普通のアパートやマンションに比べると格安が基本。
そしてシェアをするので、誰かと一緒に暮らし孤独ではなくなり、一人ではないという安全がある。
香川県はまだ女性専用しかないけれど、全国には男性可能という物件もあるし、家族で住むことができる物件も多くなっているよう!
知らない人と住むのは無理!という人には向いていませんが、反対に、知らない人と住みたい!という人にはメリットしかありませんw
【家賃滞納という貧困】を読んでみて、賃貸住宅というリスクには、シェアハウスというのが現代的な解決方法の一つなのかなあと感じた。
太田垣章子【家賃滞納という貧困】 2019年 ポプラ新書
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