【されど私の可愛い檸檬】 舞城王太郎、講談社、2018年
未だに正体が明かされていない覆面作家(個人的には正体は知らなくてもいいですが)舞城王太郎の書き下ろしを含む3作品。
トロフィーワイフ
その中で紹介したいのがこの本の一作目「トロフィーワイフ」です。
トロフィーワイフという言葉は、トロフィーのような妻、つまり男性にとっての自己顕示欲(トロフィー)のような妻、見た目だけとか良い家系とか内面を無視して存在する妻のこと。
解釈は色々ですが、キラキラとして男性を引き立てる妻という意味。女性を物扱いした女性蔑視の良くない言葉です。
さて、この話の中身はかいつまんで言えば「真実の愛」。
小説なので、要約するのもナンセンスだし、できるものではありません。
ここまで、トロフィーワイフと真実の愛だけでは、分かりやすい話ができてしまいそうですが、そうはいきません。舞城王太郎ですからw
登場人物について
登場人物は矢吹棚子(たなこ)と扉子(とびらこ)。もう名前から変、というか舞城王太郎らしいw
棚子はまだ存在していると思われるが、扉子なんて聞いたことが無い。。でもこの名前も話の中で意味がでてきます。
そして棚子の友達の軍曹(時田晴)。この軍曹のあだ名も「時田晴ちゃんが軍曹と呼ばれるのは兵隊みたいに規律正しいとか厳しいとか「でんでで~れで~れで~れ・でんでで~れで~♪」的な何かが口をつくとかじゃなくて、実際に陸上自衛官として五年目に二等陸曹になったことがあるからで、二等陸曹は一般的階級では《軍曹》に当たる。」(されど私の可愛い檸檬、13P)という経緯がある。
話の内容には大きく関わらないのだが細かい設定がおもしろい。
設定について
他にも設定としてこの軍曹の旦那の親を棚子が介護するわけだが、軍曹の旦那の親が介護状態になった理由が「一昨年交通事故に遭ったんだって。町内会の旅行で、バスのもらい事故で、ここのご近所さん一斉に寝たきり状態」(されど私の可愛い檸檬、42P)
ブラックジョークなところもあるがこんな細かいところが秀逸なんです。
まあこの設定についても、ほんの一部であまり重要じゃない設定ですが、いちいち面白い設定にしています。
あとは舞城王太郎の出身地である福井県。もしくは福井県西暁町(この町は架空の町のようです。)。福井県に関してはほぼ毎回出てきますね。この「トロフィーワイフ」にも、もちろん福井県が出てきます。
『私たちが幸せを感じる理由』
またこの話の中に出てくる割とキーポイントのTEDの心理学者ダンギルバート『私たちが幸せを感じる理由』の話。
https://www.ted.com/talks/dan_gilbert_asks_why_are_we_happy/transcript?language=ja
これは本を読む前に見ていると話が分かりやすい、というか小説の読後も深く考えさせられる話なので、先に見ておくと取っ掛かりがつかみやすいといった方が良いですね。まとめ記事も作っております⇓
このTEDの話が要所になっています。
はじめにトロフィーワイフと真実の愛の話といいましたが、結局は幸せについて違う視点を与えてくれる話だと思っています。
ここまで要所、要所をご紹介しましたが、あとは本を読んでいただきたいです!面白さを伝えきれないですが、絶対に面白いです!
きちんと読めば必ず引き込まれ、しばらくは考えさせられる内容です。そんな舞城ワールドの罠にはまって欲しいw
その他の収録
他にも「ドナドナ不要論」という題名だけでも気になる話と、本の題にもなっている「されど私の可愛い檸檬」が収録されています!
幸せについて迷いがある人には本当にオススメの本です!天才舞城王太郎の世界観も堪能できる1冊です。
2ヶ月連続で発刊された先の本「私はあなたの瞳の林檎」もおすすめです!
合わせて読むと舞城ワールドにどっぷり浸かれますw
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